冬用の殺菌・殺虫剤として便利な「石灰硫黄合剤」。
効果の高さと幅広さに、バラや盆栽などに使われていた方も多いと思います。
ですが、本来の目的と違う危険な用途で使われることが多発し、2010年に500mlと1lの容量のものが販売停止となってしまいました。
大容量のものは販売されていますが、個人で楽しむには少し手が出しにくいですよね。
そこで今回は、石灰硫黄合剤の代用品をご紹介していきます。
目次
代用品はある?ない?石灰硫黄合剤のはたらき
残念ながら、石灰硫黄合剤と全く同じはたらきをする薬剤はありません。
ですので、気になる症状に合わせた代用品・代用法を取り入れていきます。
石灰硫黄合剤は越冬病害虫の殺菌や殺虫作用があり、主に以下の病気や害虫に効果的です。
- うどんこ病
- 黒点病(黒星病)
- ハダニ
- カイガラムシ
石灰硫黄合剤の代用品はこれ!【うどんこ病の場合】
(うどんこ病 出典:Wikipedia)
うどんこ病の原因は糸状菌と呼ばれるカビの仲間で、土や落ち葉の中に潜んでいます。
風にのって飛んで来て、植物の葉に付着します。
付着した胞子は葉の表面に菌糸をめぐらせ、気孔から葉の中に侵入し養分を吸います。
うどんこ病に冒された部分は白く変色し、光合成ができないため不育障害の原因となります。
①酢水を使う
酸性である酢を吹き付けることによって、葉のph値(酸度)が急激に変化し、原因菌が死滅します。
また、酢には浸透作用があり、葉の中まで染み込むため入り込んだ菌までしっかり効果があります。
【用意するもの】
✔ 食用酢 1〜3ml
✔ 水 350cc
✔ スプレー容器
手順
- スプレー容器に食用酢と水を合わせ、よく混ぜます。
- 1をうどんこ病が気になる箇所に噴霧します。
- 白い粉を落とすように指でこすります。
早めの塗布がより効果的ですので、白い粉を吹く前の葉が波打ってる状態で塗布するのが理想です。
②重曹水を使う
重曹は、農薬取締法でうどんこ病気散布用殺虫剤に指定されています。
ただし一口に重曹と言っても、工業用・掃除用・食用と様々です。
植物への影響を考え、一番安全性の高い食用を使用します。
【用意するもの】
✔ 重曹1g
✔ 水 500〜1000ml
✔ スプレー容器
手順
- スプレー容器に重曹と水を合わせます。このとき溶け残りがないようしっかり攪拌してください。
- 1をうどんこ病が気になるところに噴霧します。
③米ぬかを使う
葉っぱの表面には、色々な微生物が住んでいます。
人間の腸の中に「悪玉菌」と「善玉菌」がいるよう、その微生物の中には葉を病気から守るはたらきをするものもいます。
その善玉菌のエサとして適しているのが、リンと窒素が含まれている米ぬかです。
つまり、米ぬかを与えることで葉の表面にいる善玉菌を応援し、病気からの回復を促すのです。
【用意するもの】
✔ 米ぬか
手順
指に米ぬかをつけ、うどんこ病の気になる部を摘むようにし、こすり落とします。
そのほか・・・
- マルチングをし、土の中にいる菌が、雨や水やり時に跳ねて葉に付着するのを防ぐ
- 菌の繁殖を抑えるため、鉢植えの場合は日当たりの良い場所に置く
なども、うどんこ病の予防・対策に効果的です。
石灰硫黄合剤の代用品はこれ!【黒点病(黒星病)の場合】
黒点病もうどんこ病と同様、糸状菌の一種が原因で起こる病気です。
葉に黒い点ができ、やがて黄色く変色し落ちてしまいます。
葉が減ると樹勢が衰え、花が咲きづらくなることがあります。完治の難しい厄介な病気です。
①病気の葉を取り除く
被害の拡散を防ぐため、黒点病に冒された葉は発見次第取り除きます。
すでに落ちてしまった葉からも感染しますので、落ち葉も残さず始末しましょう。
②葉が濡れるのを極力防ぐ
菌は適度な湿度と温度、栄養で繁殖します。
温度と栄養は対策のしようがないので、極力葉を濡らさないよう注意しましょう。
水やりの際は葉にかからないようにしたり、鉢植えの場合は雨の日は屋根の下に井戸させるのが良いです。
③葉の風通しを良くする
湿度が篭るのを塞ぎ、乾燥させ、また早期に発見しやすくするために葉の風通しを良くしておきます。
株は間隔を開けて植え、こまめに剪定しましょう。
④マルチング をする
雨や水やりの際の跳ね返りによる菌の付着を防ぐため、マルチングをします。
また、マルチングは定期的に交換するようにしましょう。
⑤市販の薬剤を使う
黒点病が発生してしまった場合、市販の薬剤で対処します。
発生初期には、トリホルン乳剤(サプロール乳剤)芽吹き前にはペノミル水和液(ベンレート水和液)を使用します。
石灰硫黄合剤の代用品はこれ!【ハダニの場合】
(ナミハダニ 出典:Wikipedia)
ハダニは、体長0.3mmから0.5mmの昆虫で、植物の葉の裏に寄生します。
栄養を吸い取り、葉緑素を抜いて葉を白くし光合成ができない状態にしてしまいます。
被害がひどくなると、植物が枯れる原因になってしまいます。
①水をかける
ハダニは水が苦手です。
定期的に霧吹きで葉の裏側に水をかけることで、予防することができます。
ただし、水のやりすぎはカビやアブラムシの原因になりますので注意しましょう。
②牛乳+水を使う
ハダニが発生した場合、牛乳と水を使います。
牛乳は表面に膜を張ります。その牛乳をスプレーすることでハダニの気門(呼吸をする穴)を塞ぎ、窒息死させます。
【用意するもの】
✔ 牛乳
✔ 水
✔ スプレー容器
手順
- スプレー容器に牛乳と水を1:1で合わせ、よく混ぜます。
- ハダニが発生した箇所に噴霧します。
- 牛乳が残っていると植物が腐る原因となりますので、きれいに水で洗い流します。
③セロテープやガムテープを使う
セロテープやガムテープの粘着面で、ハダニをくっつけて駆除します。
市販の薬剤を使用する場合は、でんぷんを主成分としたものが出ていますので、そちらがおすすめです。
石灰硫黄合剤の代用品はこれ!【カイガラムシの場合】
(カイガラムシ 出典:Wikipedia)
カイガラムシは、殻や蝋をまとった昆虫で、口から出した針を植物に突き刺し栄養を吸い取ります。
見た目が悪いのはもちろんですが、別の病気のウィルスを媒介することもあり植物を枯らす原因にもなります。
薬剤が浸透しにくく、退治するのが難しいとされています。
①風通しを良くする
カイガラムシは狭い隙間や暗くて風通しの悪いところで発生しやすいことで知られています。
定期的に枝や葉を剪定し、風通しを良くしておきましょう。早期発見にも繋がります。
②歯ブラシやワイヤーブラシで削り落とす
発見した場合、歯ブラシやワイヤーブラシで削り落とすことで駆除できます。
剥がれ落ちたカイガラムシは基本的にそのまま死んでしまいますが、まれに這い上がってくるものがいます。
また、メスの死骸からも幼虫が孵化します。
細かく踏み潰したり薬剤をかけるなどしてトドメをさしておきましょう。
大量に発生している場合、枝ごと取り除くのもひとつの方法です。
③マシン油乳液を使う
マシン油乳液とは、農薬の一種で機械油に界面活性剤を加え乳化させたものですが、カイガラムシに効果があります。
体を覆う蝋を剥ぐと同時に、カイガラムシの体に油膜がピッタリと張り付き窒息死させます。
【用意するもの】
✔ マシン油乳液
✔ 水
✔ スプレー容器
✔ 計量カップ
手順
- スプレー容器に水とマシン油乳液を混ぜ合わせます。※濃度は植物により変わり、パッケージに希釈率が書いてありますので、それに従い計量カップで測定して入れましょう。
- カイガラムシに噴霧します。
カイガラムシの成虫は足が退化しており、移動しないものがほとんどです。
- 買ってきた苗や植物についている
- 鳥の足や人間の衣類についてくる
- 風で幼虫が飛ばされてくる
などが原因と言われていますので、予防は難しく発見次第対処していくのが主になります。
市販の薬剤を使う際に気をつけたいこと
さて、身の回りにあるものでできる代用品や代用法を中心にご紹介してきましたが、発生状況や経過によっては市販の薬剤を使うこともあるかと思います。
①使用上の注意を必ず守る
薬剤にはそれぞれ、使用量や間隔が定められています。
効果が出ていないように思えると、多めに使用したくなったり、間隔をあけず頻繁に使用したくなってしまいますよね。
ですが、薬剤の使いすぎは薬害を招くおそれがあります。
弱っている植物にさらに負担をかけないよう、使用上の注意は必ず守ってください。
②同じ薬剤を使い続けない
人間の体もそうですが、同じ成分の薬剤を使い続けると、耐性ができ効果が薄まってしまうことがあります。
主成分が違う種類の薬剤を交代で使うなど、工夫して薬剤の効果を最大限に発揮させるのがおススメです。
③植物と病気の適応をしっかりと確認する
同じ病気や害虫の予防に使う場合でも、植物によって薬剤を変えなければならないことがあります。
「また同じ病気だから、前回別の植物に使った残りを使おう」と思っても、必ずしも適応しているとは限らないということです。
どんな病気・害虫の予防のために、何の植物に使いたいのか。しっかり確認した上で薬剤を選んでください。
まとめ
まとめ
✔ 石灰硫黄合剤の総合的な代用品はなく、症状に合わせた対処が必要。
✔ うどんこ病には、酢水や重曹水、米ぬかが効果的。
✔ 黒点病は葉を濡らさず、風通しを良くしマルチング で予防。発見したら葉を処分し市販の薬剤を使用すると良い。
✔ ハダニは葉に水をやることで予防、発見したら牛乳やセロテープで駆除すると良い。
✔ カイガラムシは歯ブラシやワイヤーブラシで削り落とす。難しい場合はマシン油乳液を用いると良い。
いかがでしたでしょうか?
石灰硫黄合剤の代用品がないのは残念ですが、落ち着いてひとつずつ対処していけば植物の元気を取り戻すことができます。
庭や鉢植えの植物が美しく育った姿を見ると、嬉しくて誇らしい気持ちになりますよね。ぜひお試しください!